住宅ローン控除

連帯債務割合の取決めがある場合の住宅ローン控除、贈与税

2021年9月26日

贈与

持分に応じない連帯債務割合の取決めを行う場合、贈与となり、住宅ローン控除が減ったり、贈与税の対象になったりするので注意が必要です。

そこで今回は、そのような持分に応じない連帯債務割合の取決めを行った場合、住宅ローン控除や贈与税はどうなるのか、また、連帯債務の計算明細書(付表)の書き方はどうなるのか詳しく解説します。

持分に応じない連帯債務割合の取決めは贈与になる

連帯債務割合の取決めがある場合の住宅ローン控除や贈与については、国税庁の質疑応答事例「共有の家屋を連帯債務により取得した場合の借入金の額の計算」で具体例がでていますので、その具体例をベースに解説します。(質疑応答事例には載っていない具体的な住宅ローン控除の計算のしかたや贈与税の計算のしかたを解説する為にアレンジしてます)

それでは具体例を見ていきましょう。

具体例

  • 家屋土地4,500万円(夫婦で共有、持分各1/2)
  • 自己資金500万円(夫婦で持分に応じて負担)
  • 借入金4,000万円(夫婦で連帯債務、負担割合の取決め夫60%、妻40%)
  • 毎年の借入金返済額200万円(返済期間20年)
  • 1年目、借入金年末残高3,800万円
  • 2年目、借入金年末残高3,600万円

具体例を整理すると以下のようになります。

連帯債務者
①家屋土地4,500万円
(持分割合)
2,250万円
(1/2)
2,250万円
(1/2)
②自己資金500万円250万円250万円
③持分に応じた負担すべき連帯債務4,000万円
(持分に応じた負担すべき連帯債務割合)
2,000万円
(50%)
2,000万円
(50%)
④持分に応じない取決めた連帯債務4,000万円
(持分に応じない取決めた連帯債務割合)
2,400万円
(60%)
1,600万円
(40%)
⑤夫から妻への贈与③ー④
(贈与割合)
400万円
(10%)
400万円
(10%)

夫婦それぞれ自分の①持分から②自己資金を差し引いた③持分に応じた負担すべき連帯債務(割合)は、

③夫2,000万円(50%)、妻2,000万円(50%)になります。

この金額と割合が、本来連帯債務者それぞれが自分の持分に応じて負担すべき連帯債務と連帯債務割合(自分が買った分が自分が支払う分)ですが、具体例では、これとは違った夫60%、妻40%という取決めを行っているので、実際に負担する連帯債務(割合)は、

④夫2,400万円(60%)、妻1,600万円(40%)となっています。

この③持分に応じた負担すべき連帯債務(割合)と④持分に応じない取決めた連帯債務(割合)との差額は夫から妻への贈与になります。

⑤夫400万円(10%)、妻400万円(10%)

夫は400万円妻の分を負担してあげる。妻は400万円夫に負担してもらう。ということになります。この贈与分は住宅ローン控除の対象になりません

夫は、
③自分が負担すべき2,000万円(50%)⇒住宅ローン控除の対象
⑤妻の分を負担してあげる400万円(10%)⇒住宅ローン控除の対象外(自分の分ではないので)

妻は、
④自分が負担する1,600万円(40%)⇒住宅ローン控除の対象
⑤夫に負担してもらう400万円(10%)⇒住宅ローン控除の対象外(自分で負担してないので)

連帯債務割合の取決めがある場合の住宅ローン控除

実際の住宅ローン控除の計算は、上記のように借入金の当初金額ではなく、借入金の年末残高を使うので、住宅ローン控除の対象となる借入金の年末残高の計算式は以下のようになります。(後述しますが連帯債務の計算明細書(付表)もこのように計算します)

借入金の年末残高の計算式

以下のいずれか少ない金額

  • 持分に応じた負担すべき連帯債務
  • 借入金の年末残高×持分に応じない取決めた連帯債務割合

具体例だと、持分に応じた負担すべき連帯債務(割合)は、夫2,000万円(50%)、妻2,000万円(50%)。借入金の年末残高は、1年目3,800万円、2年目3,600万円。取決めた連帯債務割合は、夫60%、妻40%なので、夫婦それぞれの1年目と2年目の住宅ローン控除の対象となる借入金の年末残高は以下のようになります。

夫は、
1年目2,000万円(50%)<3,800万円×60%=2,280万円∴2,000万円
2年目2,000万円(50%)<3,600万円×60%=2,160万円∴2,000万円

(参考)
4年目2,000万円(50%)>3,200万円×60%=1,920万円∴1,920万円
返済が進むと借入金の年末残高×60%が2,000万円(50%)以下になるので、4年目以降は夫も60%控除できるようになります。夫婦合わせて100%控除対象になります

妻は、
1年目2,000万円(50%)>3,800万円×40%=1,520万円∴1,520万円
2年目2,000万円(50%)>3,600万円×40%=1,440万円∴1,440万円

上記借入金の年末残高(住宅の取得対価が限度)に控除率を乗じた金額が住宅ローン控除の金額になります。

連帯債務割合の取決めがある場合の贈与税

贈与税の計算も、借入時に妻が夫に負担してもらう借入金の総額400万円に対していっきにかかるのではなく、毎年暦年単位で毎年の借入金返済額と借入金利息のうち夫に負担してもらった分に対してかかるので、贈与税の計算式(暦年課税)は以下のようになります。
(昭34.6.16直資58「共かせぎ夫婦の間における住宅資金等の贈与の取扱について」)

贈与税の計算式(暦年課税)

贈与を受けた金額(連帯債務以外の贈与も)が贈与税の基礎控除110万円以下の場合は贈与税はかかりません

  • (毎年の借入金返済額と借入金利息の合計×贈与割合ー贈与税基礎控除110万円)×贈与税率

具体例だと、毎年の借入金返済額は200万円。贈与割合は10%なので、妻の1年目と2年目の贈与税は以下のようになります。(借入金利息は計算を簡便化するため省略してます)

1年目200万円×10%=20万円≦110万円∴贈与税なし
2年目200万円×10%=20万円≦110万円∴贈与税なし

贈与税は上記の通り年間元利返済額や贈与割合が高くなければ基礎控除がある為かかりません

連帯債務割合の取決めがある場合の連帯債務の計算明細書(付表)の書き方

住宅ローン控除の確定申告で連帯債務がある場合、連帯債務の計算明細書(付表)で連帯債務割合を計算しますが、計算明細書タイトル下2段目の注書きに

連帯債務に係る住宅借入金等について、当事者間において任意の負担割合が取り決められている場合には、税務署にお尋ねください。

とある通り、連帯債務割合の取決めがある場合は、通常の場合(連帯債務割合の取決めがない場合)と書き方が異なります

連帯債務の計算明細書(付表)「タイトル」「注書き」
タイトル下2段目の注書き

連帯債務割合の取決めがある場合の連帯債務の計算明細書(付表)の書き方については、国税庁の「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除について留意すべき事項」で「【記載例5-2】(PDFファイル/560KB)」がでていますので、その記載例をポイントを絞って解説します。

連帯債務の計算明細書(付表)「各共有者の取得した資産に係る取得対価の額等の計算」欄
連帯債務の計算明細書(付表)「各共有者の住宅借入金等の年末残高」欄
連帯債務の計算明細書(付表)「注書き」

上記(注)2と(注)3(一般の用紙にこの注書きはありません)にある通り、⑭欄と⑯欄だけ通常の場合(連帯債務割合の取決めがない場合)と書き方が異なります。(あとは同じ)

⑭欄には、任意の負担割合を記載する。
⑯欄は、「(⑩+(⑬と⑮のいずれか少ない方の金額))」を記載する。

  • ⑬欄は、計算式(⑦ー⑧ー⑨)に従って持分に応じた負担すべき連帯債務を記載します。
  • ⑭欄は、計算式(⑬÷⑪)は使わず取決めた連帯債務割合を記載します。(計算式だと持分に応じた負担すべき連帯債務割合で各50%)
  • ⑮欄は、計算式(⑫×⑭)に従って連帯債務による借入金の年末残高×持分に応じない取決めた連帯債務割合を記載します。
  • ⑯欄は、計算式(⑩+⑮)を(⑩+(⑬と⑮のいずれか少ない方の金額))と変えて、⑬持分に応じた負担すべき連帯債務が限度となるように記載します。

関連記事上記以外の箇所など、連帯債務の計算明細書(付表)の書き方について詳しくは以下の記事をご覧ください。

まとめ

いかがだったでしょうか。普通は連帯債務の計算明細書(付表)を上から順に記載していけば、自動的に持分に応じた負担すべき連帯債務割合になるので、収入に見合わない持分でない限り、上記のような住宅ローン控除が減ったり、贈与税がかかったりする心配はありませんが、国税庁の質疑応答事例や連帯債務の計算明細書(付表)の注書きで連帯債務割合の取決めについて書かれているので、その場合どうなるのか解説しました。ご活用ください。

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