住宅ローン控除の確定申告で連帯債務がある場合に提出する「(付表)連帯債務がある場合の住宅借入金等の年末残高の計算明細書」。連帯債務割合や自己資金の調整など分かりにくい箇所が多いです。
そこで今回は、そんな連帯債務がある場合の計算明細書(連帯債務の付表)について、悩まず書けるように書き方をまとめておきます。
連帯債務の付表とは
提出が必要な場合
正式名称「(付表)連帯債務がある場合の住宅借入金等の年末残高の計算明細書」、略して「連帯債務の付表」は以下の場合に提出が必要になります。
- 確定申告で住宅ローン控除を受ける場合(年末調整の場合は不要)
- 連帯債務がある場合
関連記事年末調整の場合に提出する「住宅借入金等特別控除申告書」の書き方については以下の記事をご覧ください。(連帯債務の書き方)
連帯債務の付表の目的
連帯債務の場合、銀行から送られてくる借入金の年末残高証明書の金額は連帯債務全体の金額(負担割合は自由なので年末残高が連帯債務者ごとに分かれていない)ですが、住宅ローン控除は連帯債務者ごとにそれぞれ計算するので、残高証明書の金額を負担割合に応じて連帯債務者それぞれに分ける必要があります。
連帯債務の付表は、連帯債務者それぞれの負担割合(連帯債務割合)を計算して、それぞれの借入金の年末残高を計算(年末残高証明書の金額×連帯債務割合)する為にあります。
連帯債務割合の計算のしかた
連帯債務の付表の書き方に入る前に、まずは基本的な連帯債務割合の計算のしかたについて確認しておきましょう。夫婦で連帯債務のケース。
連帯債務者 | 夫 | 妻 |
①家屋土地3,000万円 (持分割合) | 1,500万円 (1/2) | 1,500万円 (1/2) |
②自己資金500万円 | ー | 500万円 |
③連帯債務2,500万円 (連帯債務割合) | 1,500万円 (60%) | 1,000万円 (40%) |
連帯債務割合は以下の手順(考え方)で計算します。
- 自分の持分①が、自分が支払うべき金額①(持分と支払は表裏一体、支払分が持分)
- 自分が支払うべき金額①から自己資金②を除いた分が、自分が負担すべき連帯債務③
- それぞれが負担すべき連帯債務③の割合が、それぞれが負担すべき連帯債務割合
- 残高証明書の金額×それぞれの連帯債務割合=それぞれの借入金の年末残高
参考 連帯債務割合の取決め
上記が持分に応じたそれぞれが負担すべき連帯債務割合の計算のしかたですが、連帯債務割合は自由に決められるので、例えば上記の例で夫70%、妻30%とすることも出来ます。ただし、この場合、持分に応じた連帯債務割合ではないので、持分に応じた連帯債務割合との差額10%が夫から妻への贈与(負担すべき分を負担してもらっている)となり、毎年の返済額の10%が贈与税の基礎控除110万円を超える場合、贈与税の対象になります。また、夫が負担した10%分は、夫婦ともに住宅ローン控除の対象にならないので、連帯債務割合の自由な取決めには注意が必要です。
関連記事連帯債務割合の取決めがある場合の取扱いについて詳しくは以下の記事をご覧ください。
それでは連帯債務の付表の書き方について具体的に見ていきましょう。
連帯債務の付表の書き方
連帯債務の付表は記載する欄は多いですが、上記連帯債務割合の計算の手順に沿って、大きく以下の3つのブロックになっています。
- 各共有者の持分を計算する箇所
- 各共有者の自己資金を計算する箇所
- 各共有者の連帯債務割合と年末残高を計算する箇所
以下の具体例を使って順に解説します。
具体例
- 家屋2,000万円(夫婦で共有、持分各1/2)
- 自己資金500万円(妻が親からもらったお金300万円、他夫婦の貯金)
- 借入金1,500万円(夫婦で連帯債務、負担割合の取決め無し、年末残高1,400万円)
各共有者の持分を計算する箇所
夫の申告分という前提で、氏名の(あなた)は夫、(共有者)は妻を記載します。妻の申告分は(あなた)を妻、(共有者)を夫に入れ替えて記載します。(記載内容は夫と同じ)
このブロックは、上から順に記載していきます。
①家屋の取得対価の額(増改築等の費用の額)
売買契約書や工事請負契約書などから記載。補助金や住宅取得資金の贈与がある場合は控除前の金額。具体例2,000万円。
②各共有者の共有持分
登記事項証明書から記載。具体例各1/2。
③各共有者の持分に係る家屋の取得対価の額等
①×②。具体例各1,000万円 。
④土地等の取得対価の額
売買契約書などから記載。補助金や住宅取得資金の贈与がある場合は控除前の金額。具体例土地なし。
⑤各共有者の共有持分
登記事項証明書から記載。具体例土地なし。
⑥各共有者の持分に係る土地等の取得対価の額
④×⑤。具体例土地なし。
⑦各共有者の取得した資産に係る取得対価の額等
③+⑥。具体例各1,000万円 。
各共有者の自己資金を計算する箇所
このブロックは、まず⑨~⑫を記載して、最後に⑧を記載します。(⑧は差額調整がある為)
⑨各共有者の単独債務による当初借入金額
借入金の年末残高等証明書から記載。具体例単独債務なし。
連帯債務の場合、通常単独債務は出てきません。
⑩当該債務に係る住宅借入金等に係る年末残高
借入金の年末残高等証明書から記載。具体例単独債務なし。
⑪連帯債務による当初借入金額
借入金の年末残高等証明書から記載。具体例1,500万円。
連帯債務の場合、証明書の摘要欄に連帯債務者の記載があります。
⑫当該債務に係る住宅借入金等に係る年末残高
借入金の年末残高等証明書から記載。具体例1,400万円。
⑧各共有者の自己資金負担額
この欄は「自己資金」の他に、以下の付表注書きにある通り「差額調整」の欄にもなっています。ですので、この欄は今までの単純な資料転記と違い、自分で金額を計算する必要があります。
まず、「自己資金」になるものには以下のものがあります。
(誰が出したかはっきりしてるもの)
- 独自の貯金(結婚前の貯金など)
- 共有者ごとに交付される補助金(すまい給付金など)
- 住宅取得資金の贈与(親からもらったお金など)
「自己資金」は出した人の欄に記載します。
次に、「差額調整」になるものには以下のものがあります。
(誰が出したかはっきりしてないもの)
- 共同の貯金(結婚後の貯金など)
- 共有者ごとに交付されない補助金(地方公共団体の補助金など)
- オーバーローン(取得対価<借入金)
「差額調整」は以下の算式で計算した差額を持分割合で按分して各人の欄に記載します。
差額=取得対価合計(①家屋+④土地)ー取得資金合計(⑧自己資金+⑨単独債務当初+⑪連帯債務当初)※番号は連帯債務の付表の番号
その他「差額調整」に関する留意点は以下の通りです。
- 差額調整を行わないと連帯債務割合の合計が100%にならないので必ず行う。
- オーバーローンの場合、差額がマイナスになるのでー100のように記載する。
- 差額を持分割合で調整する方法(資産調整)は簡便だが唯一の方法ではないので、収入割合など適宜実態に合わせて調整する。
以上の計算を具体例に当てはめると以下のようになります。
夫 | 妻 | |
自己資金 | ー | 300万円 |
差額調整 | 100万円 | 100万円 |
合計 | 100万円 | 400万円 |
- 妻が親からもらったお金300万円は妻の自己資金に記載。
- それ以外の差額200万円※は差額調整で持分割合(各1/2)で各人に配分。
- それぞれ「自己資金」と「差額調整」の合計を連帯債務の付表に記載。
※(①家屋2,000万円+④土地0万円)ー(⑧自己資金300万円+⑨単独債務当初0万円+⑪連帯債務当初1,500万円)=差額200万円
各共有者の連帯債務割合と年末残高を計算する箇所
ここは⑬からになりますが、その上の⑦~⑫も計算に使うので載せてあります。
このブロックは、上から順に記載していきます。
⑬各共有者の負担すべき連帯債務による借入金の額
⑦ー⑧ー⑨。具体例夫900万円、妻600万円。
この金額が持分に応じたそれぞれが負担すべき連帯債務の額になります。
⑭連帯債務による借入金に係る各共有者の負担割合
⑬÷⑪。具体例夫60%、妻40%。
この割合が持分に応じたそれぞれが負担すべき連帯債務割合になります。
先程、⑧各共有者の自己資金負担額のところで解説しましたが、「差額調整」がされていないと連帯債務割合の合計が100%になりません。ですので、ここで合計が100%になるか必ず検算を行います。
国税庁の確定申告書等作成コーナーでも連帯債務割合の合計が100%にならないと以下のエラーメッセージが出て先に進めなくなります。
(エラーメッセージ)
計算の結果、以下の金額間に相違があるため、調整が必要になります。
各共有者の自己資金負担額を各共有者間で調整して減額(増額)し、「負担割合合計」が100%になるように入力してください。
このエラーメッセージが出た場合は「差額調整」がされていないということになりますので⑧各共有者の自己資金負担額のところで解説した方法で自己資金を調整します。
⑮連帯債務による借入金に係る各共有者の年末残高
⑫×⑭。具体例夫840万円、妻560万円。
この金額が連帯債務者それぞれの連帯債務による借入金の年末残高になります。
⑯各共有者の住宅借入金等の年末残高
⑩+⑮。具体例夫840万円、妻560万円。
この単独債務と連帯債務を足した借入金の年末残高が連帯債務者それぞれの住宅ローン控除対象金額になります。
まとめ
いかがだったでしょうか。連帯債務の付表は連帯債務割合の考え方と自己資金の調整のしかたがポイントになります。ご活用ください。