住宅ローン控除

【令和4年度改正】令和4年~住宅ローン控除どう変わる?

2022年5月31日

どう変わる?

令和4年度税制改正で住宅ローン控除の適用期限が令和7年まで4年間延長されるとともに、その中身についても大幅な改正が行われました。

そこで今回は、令和4年から住宅ローン控除がどう変わるのか、改正の背景や具体的な変更点など詳しく解説します。

改正のポイント(主要項目の改正の背景、変更点)

令和4年度税制改正で、借入限度額、控除率、控除期間といった主要項目に関して大幅な改正が行われました。

まずは、その主要3項目の改正の背景と変更点について解説します。

借入限度額/2050年カーボンニュートラル実現のため省エネ性能等が高い住宅を優遇

借入限度額は、国が目指す「2050年カーボンニュートラル」を実現する為に、以下のように改正されました。

  • 省エネ性能等が高くなるほど借入限度額が大きくなるようになりました。(省エネ性能等に応じた借入限度額の上乗せ措置)
  • 令和6年以降に建築確認を受けた新築住宅については、省エネ基準を満たさない住宅は借入限度額がゼロ(住宅ローン控除の対象外)になりました。(省エネ基準への適合を要件化)
  • 上記省エネ性能等に応じた借入限度額の設定をする為に、住宅の区分が省エネ性能等に応じて細分化されました。(買取再販住宅、ZEH水準省エネ住宅、省エネ基準適合住宅、その他の住宅の区分を新設)

ここが変わった!

令和4年度改正で、借入限度額(大、小)を区分する基準が「消費税率(特定取得、特定取得以外)」から「住宅の種類(省エネ性能等)」に変わりました。

改正前の借入限度額は、「消費税率8%引上げに伴う経済対策」として増額されたので、「認定住宅」と「一般住宅」に区分した上で、消費税率に応じて借入限度額が区分されていました。(従って消費税率を確認して借入限度額を判断)

  • 認定住宅(新築の認定住宅)
    • 特定取得(消費税率8%、10%)5千万円
    • 特定取得以外(消費税率0%、5%)3千万円
  • 一般住宅(上記認定住宅以外)⇒新築、中古、省エネ性能等問わない
    • 特定取得(消費税率8%、10%)4千万円
    • 特定取得以外(消費税率0%、5%)2千万円

改正後の借入限度額は、「2050年カーボンニュートラル」の実現の為に省エネ性能等が高い住宅を優遇するようになったので、「新築住宅、買取再販住宅」と「買取再販住宅以外の中古住宅」に区分した上で、省エネ性能等に応じて借入限度額が区分されるようになりました。(従って省エネ性能等を確認して借入限度額を判断)

  • 新築住宅、買取再販住宅
    • 認定住宅(令和4年5年)5千万円(令和6年7年)4.5千万円
    • ZEH水準省エネ住宅(令和4年5年)4.5千万円(令和6年7年)3.5千万円
    • 省エネ基準適合住宅(令和4年5年)4千万円(令和6年7年)3千万円
    • その他の住宅(令和4年5年)3千万円(令和6年7年)2千万円又は控除無
  • 買取再販住宅以外の中古住宅⇒消費税率問わない
    • 認定住宅等(令和4年5年6年7年)3千万円
    • その他の住宅(令和4年5年6年7年)2千万円

控除率/会計検査院の指摘を受け引下げ

控除率は、現下の低金利の下、実際の住宅ローンの金利(金利1%未満が78%)が住宅ローン控除の控除率(1%)を下回っているという会計検査院の指摘を受けて、以下のように改正されました。

  • 控除率が1%から0.7%に引下げられました。

控除期間/当面の経済状況を踏まえ上乗せ

控除期間は、現下の経済状況を踏まえた当面の対応として、以下のように改正されました。

  • 新築住宅等につき控除期間が10年から13年に上乗せされました。

ここが変わった!

令和4年度改正で、控除期間(13年、10年)を区分する基準が「消費税率(10%で特例該当13年)」から「住宅の種類(新築、買取再販13年)」に変わりました。

改正前の控除期間は、「消費税率10%引上げに伴う経済対策」として控除期間13年の特例(特別特定取得、特例取得、特別特例取得)ができたので、消費税率10%で特例要件に該当する場合は控除期間13年、それ以外は原則の控除期間10年、というように控除期間が区分されていました。(従って消費税率と特例要件を確認して控除期間を判断)

  • 特例⇒新築、中古、省エネ性能等問わない
    • 特別特定取得(消費税率10%、入居期限)13年
    • 特例取得(消費税率10%、コロナで入居遅延、契約期限、入居期限)13年
    • 特別特例取得(消費税率10%、契約期限、入居期限)13年
  • 原則⇒新築、中古、省エネ性能等問わない
    • 上記3つの特例以外10年

改正後の控除期間は、「当面の経済対策」として新築住宅等は控除期間13年、それ以外は控除期間10年、というように、住宅の種類に応じて一律に控除期間が区分されるようになりました。(従って住宅の種類を確認して控除期間を判断)

  • 新築住宅、買取再販住宅
    • 認定住宅(令和4年5年6年7年)13年
    • ZEH水準省エネ住宅(令和4年5年6年7年)13年
    • 省エネ基準適合住宅(令和4年5年6年7年)13年
    • その他の住宅(令和4年5年)13年(令和6年7年)10年又は控除無
  • 買取再販住宅以外の中古住宅⇒消費税率問わない
    • 認定住宅等(令和4年5年6年7年)10年
    • その他の住宅(令和4年5年6年7年)10年

また、控除期間が13年の場合の住宅ローン控除の計算のしかたも改正前と改正後で変わりました。(控除期間が10年の場合は変わりません)

改正前の特例13年は、「消費税率10%引上げに伴う経済対策」なので、通常の住宅ローン控除を10年間行った後に、期間を3年間延長して2%増税分の追加控除を行います。

改正後の新築住宅等13年は、「当面の経済対策」なので、単純に通常の住宅ローン控除を13年間行います。

改正内容比較一覧(改正前、改正後)

上記3つ(借入限度額、控除率、控除期間)が令和4年度税制改正の主要な改正項目になりますが、それ以外の改正項目も含め、今回の改正内容を改正前と改正後でどのように変わったのか以下で一覧にまとめておきます。

下記表の改正前の借入限度額と控除期間は、改正後の区分に対応する金額と年数で、区分のしかたではありません。区分のしかたは、前述の通り、借入限度額であれば特定取得か特定取得以外か、控除期間であれば特別特定取得・特例取得・特別特例取得かそれ以外か、消費税率を中心に行います。

赤色改正箇所改正前改正後
入居年令和3年以前令和4年・5年令和6年・7年
借入限度額
新築・買取再販住宅※1
(改正前:新築住宅)
認定住宅※2
(改正前:認定住宅)
5,000万円5,000万円4,500万円
ZEH水準省エネ住宅※3
(改正前:一般住宅)
4,000万円4,500万円3,500万円
省エネ基準適合住宅
(改正前:一般住宅)
4,000万円4,000万円3,000万円
その他の住宅※4
(改正前:一般住宅)
4,000万円3,000万円2,000万円※6
0円※6
借入限度額
買取再販以外の中古住宅
(改正前:中古住宅)
認定住宅等※5
(改正前:一般住宅)
4,000万円※7
2,000万円※7
3,000万円同左
その他の住宅※4
(改正前:一般住宅)
4,000万円※7
2,000万円※7
2,000万円同左
控除率1.0%0.7%同左
控除期間
新築・買取再販住宅※1
(改正前:上記区分無)
13年特例
10年原則
13年13年認定住宅等
10年その他住宅
控除期間
買取再販以外の中古住宅
(改正前:上記区分無)
13年特例
10年原則
10年同左
適用対象者の所得要件
適用年の合計所得金額
3,000万円以下2,000万円以下同左
床面積要件50㎡以上50㎡以上同左
床面積緩和要件
40㎡以上
所得1千万円以下
特別特例取得に該当
所得1千万円以下
令和5年までに新築の建築確認
同左
中古住宅の築年数要件耐火25年以内
非耐火20年以内
昭和57年以降に建築された住宅同左
借入金の年末残高証明書
確定申告時、年末調整時
提出必要令和5年入居から提出不要同左
新築工事請負契約書写等
確定申告時
提出必要令和5年入居から提出不要同左
住民税の控除限度額最高136,500円最高97,500円同左

※1「買取再販住宅」とは、中古住宅を宅地建物取引業者が一定のリフォームにより良質化した上で販売する住宅。

※2「認定住宅」とは、認定長期優良住宅、認定低炭素住宅。

※3「ZEH水準省エネ住宅」のZEH(ゼッチ)とは、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(断熱、省エネ、創エネで住宅のエネルギー収支が正味で概ねゼロになる住宅)。

※4「その他の住宅」とは、省エネ基準を満たさない住宅。

※5「認定住宅等」とは、認定住宅(認定長期優良住宅、認定低炭素住宅)、ZEH水準省エネ住宅、省エネ基準適合住宅。

※6「新築・買取再販住宅」のうち「その他の住宅」の令和6年入居以降の借入限度額
・令和5年までに新築の建築確認を受けた場合「2,000万円」
・令和6年以後に建築確認を受けた場合は、
 ・登記簿上の建築日付が令和6年6月以前の場合「2,000万円」
 ・登記簿上の建築日付が令和6年7月以後の場合「0円」

※7「中古住宅」の「改正前」の借入限度額
・売主が事業者の場合(消費税あり⇒特定取得)「4,000万円」
・売主が個人の場合(消費税なし⇒特定取得以外)「2,000万円」

関連記事改正前の取扱いについて詳しくは以下の記事をご覧ください。

関連記事借入金の年末残高証明書の提出不要について詳しくは以下の記事をご覧ください。

関連記事住民税の控除限度額について詳しくは以下の記事をご覧ください。

年間控除限度額比較一覧(改正前、改正後)

年間控除限度額の改正前と改正後の比較一覧も載せておきます。

赤色改正箇所改正前改正後
入居年令和3年以前
原則10年
令和3年以前
特例13年
令和4年5年令和6年7年
新築・買取再販住宅
(改正前:新築住宅)
下段:
個人間売買
下段:
後半3年間
下段:
対象外の場合
認定住宅
(改正前:認定住宅)
50万円50万円
33.33万円
35万円31.5万円
ZEH水準省エネ住宅
(改正前:一般住宅)
40万円40万円
26.66万円
31.5万円24.5万円
省エネ基準適合住宅
(改正前:一般住宅)
40万円40万円
26.66万円
28万円21万円
その他の住宅
(改正前:一般住宅)
40万円40万円
26.66万円
21万円14万円
0円
買取再販以外の中古住宅
(改正前:中古住宅)
認定住宅等
(改正前:一般住宅)
40万円
20万円
40万円
26.66万円
21万円同左
その他の住宅
(改正前:一般住宅)
40万円
20万円
40万円
26.66万円
14万円同左

最大控除額比較一覧(改正前、改正後)

最大控除額の改正前と改正後の比較一覧も載せておきます。

赤色改正箇所改正前改正後
入居年令和3年以前
原則10年
令和3年以前
特例13年
令和4年5年令和6年7年
新築・買取再販住宅
(改正前:新築住宅)
下段:
個人間売買
下段:
対象外の場合
認定住宅
(改正前:認定住宅)
500万円600万円455万円409.5万円
ZEH水準省エネ住宅
(改正前:一般住宅)
400万円480万円409.5万円318.5万円
省エネ基準適合住宅
(改正前:一般住宅)
400万円480万円364万円273万円
その他の住宅
(改正前:一般住宅)
400万円480万円273万円140万円
0円
買取再販以外の中古住宅
(改正前:中古住宅)
認定住宅等
(改正前:一般住宅)
400万円
200万円
480万円210万円同左
その他の住宅
(改正前:一般住宅)
400万円
200万円
480万円140万円同左

まとめ

いかがだったでしょうか。借入限度額や控除期間について、改正前は「特定取得以外(個人間売買0%、5%)」「特定取得(8%、10%)」「特別特定取得(10%)」「特例取得(10%)」「特別特例取得(10%)」と消費税率を中心に判断していましたが、改正後は「住宅の種類(省エネ性能等)」で判断するように変わりました。

住宅ローン控除は年々複雑化して、これから改正後の住宅ローン控除の申告を行う場合や、改正後に慣れてから過年度分の改正前の住宅ローン控除を行う場合など、改正前と改正後で頭の切り替えが必要になるので違いをまとめておきました。ご活用ください。

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