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法人成りで節税とは?基本的なしくみを解説

2020年4月5日

だるま

みなさん、事業がある程度大きくなると法人成りをした方が節税になると聞いた事ありませんか?

今回は法人成りでどうして節税になるのか?について基本的なしくみを解説します。

法人成りでまず所得の種類と税金の種類が変わります

個人事業を株式会社などの法人形態にすることを法人成りと言います。法人成りするとまず所得の種類と税金の種類が変わります。どのように変わるのか簡単な例で見てみましょう。

毎年、売上から費用を引いた事業利益が1000万円だとします

個人事業だと

事業利益1000万円→全て事業所得→主に所得税

法人成りすると、個人は法人から役員報酬と役員退職金をもらう形になります

19年目まで毎年役員報酬700万円とすると利益1000万円は次のようになります。

役員報酬700万円→給与所得→主に所得税

法人利益300万円→法人所得→主に法人税

20年目で退職し役員退職金1000万円とすると利益1000万円は次のようになります。

役員退職金1000万円→退職所得→主に所得税

法人利益0円

法人成りで所得の種類と税金の種類が変わることによって控除が増えたり、税率が下がったりします。上記例でそれぞれ所得計算と税率がどのようになるか具体的に見ていきましょう。

法人成りで控除が増えたり、税率が下がります∴節税

控除が増えます

個人事業だと、事業所得の青色申告特別控除ですが

事業所得=利益-青色申告特別控除

青色申告特別控除は記帳レベル、e-Taxの有無に応じて10万円、55万円、65万円の3種類

上記例、利益1000万円-青色申告特別控除65万円=事業所得935万円

法人成りすると、給与所得の給与所得控除で控除が増えます

給与所得=役員報酬-給与所得控除

給与所得控除は給与収入に応じて最低55万円~最高195万円

上記例、役員報酬700万円-給与所得控除180万円=給与所得520万円

メモ

法人成りをすると個人事業では出来なかった事業主に対する給与支給が出来るようになります。また、同一生計親族に対する給与支給も「事業に専ら従事」などの要件がなくなるので支給しやすくなります。

令和2年分以降の給与所得控除(国税庁HPより)

給与等の収入金額
(給与所得の源泉徴収票の支払金額)
給与所得控除額
1,800,000円以下収入金額×40%-100,000円
550,000円に満たない場合には、550,000円
1,800,000円超3,600,000円以下収入金額×30%+80,000円
3,600,000円超6,600,000円以下収入金額×20%+440,000円
6,600,000円超8,500,000円以下収入金額×10%+1,100,000円
8,500,000円超1,950,000円(上限)
法人成りすると、退職所得の退職所得控除と二分の一課税で控除が増えます

退職所得=(役員退職金-退職所得控除)×1/2

退職所得控除は勤続1年につき40万円、勤続年数20年を超えると1年につき70万円

上記例、(役員退職金1000万円-退職所得控除40万円×20年)×1/2=退職所得100万円

メモ

法人成りをすると個人事業では出来なかった事業主と同一生計親族に対する退職金支給が出来るようになります。退職所得は長年の勤労に基づく老後の生活資金であることから退職所得控除、二分の一課税、分離課税といった他の所得より税負担が軽くなる優遇措置がとられています。親族分と合わせると節税効果は大きくなります。

税率が下がります

所得が多くなると所得税より法人税の方が適用税率が低くなります

主な税金は所得税と法人税ですが、所得税は所得に応じて最低5%~最高45%の7段階の超過累進税率で所得が少ないときは税率は低いですが、所得が多くなるにつれて税率が高くなり住民税10%と合わせた最高税率は50%以上になります。

いっぽう資本金1億円以下の普通法人の法人税は所得800万円までは15%、800万円を超える部分は23.2%で住民税、事業税と合わせた実効税率も34%止まりとなります。

ですので所得が多くなってくると所得税より法人税の方が適用税率が低くなります。

所得税の速算表(国税庁HPより)

課税される所得金額税率控除額
195万円以下5%0円
195万円を超え 330万円以下10%97,500円
330万円を超え 695万円以下20%427,500円
695万円を超え 900万円以下23%636,000円
900万円を超え 1,800万円以下33%1,536,000円
1,800万円を超え4,000万円以下40%2,796,000円
4,000万円超45%4,796,000円
所得分散効果により適用税率が下がります

また、個人事業のときは事業利益1000万円、と所得が個人に集中するので所得税の適用税率が23%と高くなりますが、法人成りすると生活資金として役員報酬700万円、事業資金として法人利益300万円、と所得を個人と法人に分散できるので所得税の適用税率が20%に下がります。

退職所得の優遇措置により適用税率が下がります

さらに、役員退職金1000万円に至っては退職所得の優遇措置で所得が大幅に圧縮されるで所得税の適用税率が5%にまで下がります。

法人成りでどのくらい節税になるかシュミレーション

上記例で20年間のシュミレーションをしてみます。

資本金1億円以下の株式会社、令和2年の税制、群馬県伊勢崎市の税率で計算。

ケース対象所得~19年目

年間税額

20年目

年間税額

20年間の

合計税額

個人事業の場合①事業利益1,000万円2,655,100円2,655.100円53,102,000円
法人成りの場合役員報酬700万円997,500円0円18,952,500円
法人利益300万円762,400円0円14,485,600円
役員退職金1,000万円0円87,000円87,000円
法人成り合計②1,759,900円87,000円33,525,100円
節税額①-②895,200円2,568,100円19,576,900円

法人成りすると退職するまでの19年間毎年895,200円節税になり、退職金がある20年目はさらに2,568,100円も節税になります。退職所得の節税効果がいかに高いかが分かります。20年間の節税合計額は19,576,900円で年平均100万円近い節税になります。

参考までに以下に税金の計算方法を記載しておきます。

個人事業の場合の事業利益1,000万円の税金

所得税

(事業所得935万円-基礎控除48万円)×所得税率23%-636,000円=所得税1,404,100円

住民税所得割

(事業所得935万円-基礎控除43万円)×住民税率10%=住民税所得割892,000円

住民税均等割 4,000円

事業税

(事業所得935万円+青色申告特別控除65万円-事業主控除290万円)×事業税率5%=事業税355,000円

合計税額 2,655,100円

法人成りの場合の役員報酬700万円の税金

所得税

(給与所得520万円-基礎控除48万円)×所得税率20%-427,500円=所得税516,500円

住民税所得割

(給与所得520万円-基礎控除43万円)×住民税率10%=住民税所得割477,000円

住民税均等割 4,000円

合計税額 997,500円

法人成りの場合の法人利益300万円の税金

法人税

法人所得300万円×法人税率15%=法人税450,000円

地方法人税

法人税45万円×地方法人税率10.3%=地方法人税46,300円

県民税法人税割

法人税45万円×県民税法人税割税率1%=県民税法人税割4,500円

県民税均等割 20,000円

事業税

法人所得300万円×事業税率3.5%=事業税105,000円

特別法人事業税

事業税105,000円×特別法人事業税率37%=特別法人事業税38,800円

市民税法人税割

法人税45万円×市民税法人税割税率8.4%=市民税法人税割37,800円

市民税均等割 60,000円

合計税額 762,400円

法人成りの場合の役員退職金1,000万円の税金

所得税

(退職所得100万円-基礎控除48万円)×所得税率5%=所得税26,000円

住民税所得割

(退職所得100万円-基礎控除43万円)×住民税率10%=住民税所得割57,000円

住民税均等割 4,000円

合計税額 87,000円

まとめ

いかがだったでしょうか?法人成りによる節税は他にも消費税2期免税、欠損金の繰越期間延長などいろいろありますが、今回は法人成りによる節税のうち基本的なしくみについて解説しました。

法人成りするかどうかは社会保険の加入、経営の自由度などさまざまな要素を総合的に判断することになると思いますが、今回解説した節税も判断材料の一つとしてぜひ参考にしてみてください。

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