みなさん、定期同額給与をご存知ですか?法人税法では役員給与の損金算入を無条件に認めているわけではありません。
今回は税務調査で否認されない為に役員給与の基礎知識について解説します。
役員報酬を損金算入するには、定期同額給与で!
法人税法では損金算入(法人税の計算で経費にすること)できる役員給与を定期同額給与、事前確定届出給与、業績連動給与の3つに限定しています。
このうち中小企業が通常使うのは定期同額給与になりますので、まずは下の基本要件2つを押さえましょう。
定期同額給与の基本要件
- 毎月同額支給
- 変更は期首から3か月以内(通常改定、定時株主総会、臨時株主総会)
上記要件は役員報酬による利益操作を防止するために設けられています。ですので、決算間際で利益が出たから役員報酬を上げて法人税を少なくしよう!というようなことはできないようになっています。
役員報酬の決定手続は、3月決算の株式会社だと、通常5月の定時株主総会で役員報酬額を決定し、会社の支給基準に基づき当月支給なら5月から、翌月支給なら6月から支給します。
役員報酬の改定は、通常特別な事情がない限り1年後の定時株主総会まで行われません。
※株主総会では役員報酬の総額だけ決定し、各取締役の役員報酬額は取締役会の決定に委ねる方法もあります。
議事録必須株主総会議事録は会社法で作成義務がありますが、税務調査でも役員報酬が株主総会での決議額を超えた過大役員報酬に該当しないか形式基準の判定に使われますので必須です。
参考 定期同額給与の変更
法人税では定期同額給与の変更は上記3か月以内の通常改定の他に次の2つが認められています。
- 臨時改定事由による改定・・・職制上の地位の変更、病気で入院した場合など
- 業績悪化改定事由による減額改定・・・銀行とのリスケジュール協議で減額せざるを得ない場合など
参考 役員報酬の決定(会社法361条)
参考 株主総会議事録の作成義務(会社法318条)
定期同額給与でないと否認されます
否認されるケース
毎月同額支給の要件の毎月支給に当てはまらないもの
- 役員賞与(夏冬のボーナス)、非常勤役員の半期ごとの役員給与(非同族会社を除く)・・・税務署に事前に届出(事前確定届出給与)がない限り、全額否認されます。
毎月同額支給の要件の同額支給に当てはまらないもの
- 残業代、歩合給・・・毎月同額である固定給以外のでっぱった部分、残業代、歩合給部分が否認されます。
変更は期首から3か月以内の要件に当てはまらないもの
臨時改定事由、業績悪化改定事由に該当しない場合で期首から3か月を過ぎた変更
3月決算だとして、
- 5月10日に会社設立、最初様子見で役員報酬を支給していなかったが10月から毎月20万円支給し始めた(5/10~8/9を過ぎた変更)・・・改定前との差額20万円×6か月=120万円が否認されます。
- 毎月20万円支給していたが10月から毎月50万円に増額変更した(4/1~6/30を過ぎた変更)・・・改定前との差額30万円×6か月=180万円が否認されます。
- 毎月50万円支給していたが10月から毎月40万円に減額変更した(4/1~6/30を過ぎた変更)・・・改定前との差額10万円×6か月=60万円が否認されます。
否認されたら2重課税でダブルパンチ
仮に役員報酬100万円が否認された場合、役員報酬の給与所得課税はそのままで、法人税の損金不算入で法人所得としても課税されるので所得税と法人税の2重課税のダブルパンチとなります。
追徴法人税等227,400円、他ペナルティーの加算税、利息の延滞税。
定期同額給与で支給していれば払う必要がなかった税金なので痛い損失です。
参考 追徴法人税等
令和2年の税制、群馬県伊勢崎市の税率で計算
法人税
法人所得100万円×法人税率15%=法人税150,000円
地方法人税
法人税15万円×地方法人税率10.3%=地方法人税15,400円
県民税法人税割
法人税15万円×県民税法人税割税率1%=県民税法人税割1,500円
事業税
法人所得100万円×事業税率3.5%=事業税35,000円
特別法人事業税
事業税35,000円×特別法人事業税率37%=特別法人事業税12,900円
市民税法人税割
法人税15万円×市民税法人税割税率8.4%=市民税法人税割12,600円
合計税額 227,400円
まとめ
いかがだったでしょうか?節税も大事ですが、否認されないことも大事です。
役員報酬は定期同額給与で!ご注意を。