国税庁の年調ソフトを導入する際、従業員への周知はどのように行うのか、従業員や会計事務所とのやり取りはどのように行うのかなど、今回は勤務先における年調ソフトの具体的な導入手順について解説します。
年調ソフトを使った年末調整の大まかな流れは下記目次の通りです。流れに沿って具体的な導入手順を解説していきます。
(JDL「年末調整システム」への取込みを前提とした当事務所の運用方法になっています)
年調ソフトのID、パスワードの決定(従業員ごとの)
年調ソフトを使う際に必要な従業員ごとのIDとパスワードを決定します。IDとパスワードは年調ソフトで使う他、勤務先で従業員からデータ提出を受ける際の本人確認や会計事務所でデータをシステムに取込む際の紐付けに使うので、会計事務所と連携して統一的に決定する必要があります。
具体的には以下の手順で行います。(顧問先様は当事務所で決定して管理表をお渡しします)
IDとパスワードの手順
- IDは「4桁の社員コード(JDL年末調整システム)」にします。(システムに取込む為)
- パスワードは「半角英数字6桁~20桁」で任意に決められますが、勤務先(会計事務所)で統一的に決めます。
- IDとパスワードを管理する為、全従業員の氏名・ID・パスワードの一覧表「IDパスワード管理表」を作ります。
- IDとパスワードの各従業員への通知は、次で解説する「年調ソフトを使った年末調整の周知(従業員への)」の案内に記載して行います。
「IDパスワード管理表」に以下の「進捗状況の管理」を付け足して「IDパスワード進捗状況管理表」にすれば、年調ソフト導入当初の慣れない一連の作業をもれなく確実に行うことができます。
進捗状況の管理
- 従業員への周知(案内)
- 従業員からの資料回収
- 勤務先での資料チェック
- 会計事務所への資料提出
年調ソフトを使った年末調整の周知(従業員への)
年調ソフトを使った年末調整(データでやりとり)は、今までの申告書用紙を使った年末調整(紙でやりとり)とはやり方が異なる為、従業員に年調ソフトを使うとどうなるのか、流れや注意点などを周知する必要があります。
具体的には以下の手順で行います。
周知の手順
- 従業員ごとに以下の案内※を作って紙に印刷して渡します。(顧問先様は当事務所で作成してお渡しします)
- 初めての方でも案内に従って進めればできますので案内に従って行うよう伝えます。(逆に案内通りに行わないと提出もれなどが起こりますので注意が必要です)
- 住宅借入金等特別控除申告書のうち「平成30年以前取得」「重複適用」は年調ソフトが対応していない為、該当する従業員がいる場合は、その分は書面(従来の控除申告書の用紙)で提出するよう指示します。
※案内は従業員の方が年調ソフトのダウンロードからデータや添付書類の提出までの一連の作業を単独で行えるように作っています。ですので、勤務先では上記手順で案内を渡すだけで従業員への周知は完了します。参考までに案内は以下の流れになっています。
案内の流れ
- 紙の案内のQRコードをスマホで読取り導入ガイドにアクセスします。
- 年調ソフトやメリットについて国税庁の動画で確認します。
- 年調ソフトを使った年末調整の流れを確認します。
- 年調ソフトを自分のスマホにダウンロードします。
- 年調ソフトの操作は紙の案内の注意点を見ながら進めます。
データ、添付書類の回収(従業員からの)
上記案内に従って従業員から年末調整の資料が提出されますが、控除申告書はメールの添付ファイルとしてデータで提出されます。データインポートでない控除証明書は添付書類として紙で提出されます。それぞれ回収したら保存します。
具体的には以下の手順で行います。
回収の手順
- パソコンのデスクトップにデータ保存用のフォルダ(フォルダ名「年末調整令和X年勤務先名」)を作ります。
- メールの添付ファイル※を上記フォルダに保存します。(ファイル名や拡張子は変更しないでください)
- 紙で提出された控除証明書は従業員ごとにクリアファイルやクリップなどで分けて保存します。
※メールで送られる添付ファイルは以下の3つです。ファイル名のXXXXはID(社員コード)です。IDパスワード管理表でどの従業員のデータか識別します。(ファイル名や拡張子は変更しないでください)
ファイルの種類
- XXXX_nopass.zip(パスワード無しのZIPファイルで控除申告書と控除証明書のデータが保存されています)
- XXXX_pass.zip(パスワード付きのZIPファイルで控除申告書と控除証明書のデータが保存されています)
- XXXX.pdf(控除申告書、証明書等貼付用台紙、控除額等一覧表のPDFファイルで入力のチェックと添付書類のチェックに使います)
データ、添付書類のチェック(勤務先での)
従業員から上記の年末調整の資料(データ、添付書類)の提出を受けたら、提出もれや入力誤りがないかチェックし、ある場合は入力の修正と修正後ファイルの再提出を指示します。
具体的には以下の手順で行います。
チェックの手順
- 提出されたPDFファイルで控除申告書の提出もれが無いかチェックします。
(従業員が控除申告書を自分で選択した場合もれる可能性があります)- 翌年分の扶養控除等申告書・・・扶養等がなくても主たる勤務先に全員提出。
- 基礎控除申告書・・・年末調整を受ける方は全員提出。
- 上記以外の控除申告書・・・該当する場合に提出。
- PDFファイルの「証明書等貼付用台紙」に記載されている添付書類(紙の証明書等)が全部提出されているかチェックします。
- 添付書類(紙の証明書等)と入力(PDFの控除申告書)が合っているかチェックします。
- 生命保険料控除証明書(紙)は以下の3項目チェック。
- 保険の区分(一般、介護医療、個人年金)
- 新・旧の区分
- 保険料の金額(証明日現在ではなく12月末見込額)
- 地震保険料控除証明書(紙)は以下の2項目チェック。
- 区分(地震、旧長期)
- 保険料の金額(証明日現在ではなく12月末見込額)
- 上記以外の控除証明書(紙)・・・金額などをチェック。
- 生命保険料控除証明書(紙)は以下の3項目チェック。
- 提出もれや入力誤りがある場合は入力の修正と修正後ファイルの再提出を指示します。
- 修正後のファイルを受取ったら再度チェックして正しく修正されていたら修正前のファイルと差替えます。(ファイルを3つとも全て差替えます)
入力誤りがある場合の修正方法は以下の通りです。従業員に修正箇所と修正方法を伝え再提出を指示します。
入力誤りの修正方法
「詳細を確認する」⇒「控除申告書作成状況」で修正する申告書の「ペンマーク(修正ボタン)」⇒該当する箇所で「修正」「削除」「+~を追加する」⇒前回の入力を修正する⇒「入力完了」⇒他にも修正箇所がある場合は同じ要領で修正⇒修正が終わったらあとは前回と同じ要領で先に進み、データ出力とメール送信を行う⇒メール送信後表示される「添付書類について」で追加の添付書類がある場合は勤務先に提出
データ、添付書類の提出(会計事務所への)
従業員から提出を受けた上記の年末調整の資料(データ、添付書類)は、会計事務所で年末調整システムに取込んで年税額の計算を行う為に会計事務所に提出します。
具体的には以下の手順で行います。
提出の手順
- データの提出
- 導入当初・・・従業員からのメールをその都度、会計事務所に転送。(導入当初は提出もれなど誤りが多い為、その都度確認、その都度修正指示)
- 軌道に乗ったら・・・従業員のデータが全部揃ったらまとめてWebPOSTBOX(JDLの送受信システム)かメールで送信。
- 添付書類の提出・・・郵送か手渡し。
WebPOSTBOXを使った送信方法は以下の通りです。安全で簡単に大容量データを送信できます。
WebPOSTBOXの送信方法
「送信BOX」をクリック⇒従業員からのデータ保存用フォルダ(フォルダ名「年末調整令和X年勤務先名」)を「送信BOX」の「送信するファイルをこのエリアにドラッグしてください」部分にドラッグ&ドロップする⇒あとは画面の案内に従って操作する
メールで従業員データをまとめて送信する場合の送信方法は以下の通りです。圧縮して(ZIPファイルにして)送信します。
メールでまとめて送信する場合の送信方法
従業員からのデータ保存用フォルダ(フォルダ名「年末調整令和X年勤務先名」)を右クリック(「送る」⇒「圧縮(zip形式)フォルダー」)でZIPファイル(ファイル名「年末調整令和X年勤務先名」)を作る⇒メールでZIPファイルを会計事務所に送信する
まとめ
いかがだったでしょうか。年末調整のデジタルトランスフォーメーション。積極的に活用してみましょう。