コロナ対策 法人税

コロナ対策!業績悪化改定事由による役員報酬減額

2020年5月28日

チェック

業績が悪化したとき、役員報酬を減額して社保、源泉税など少しでも資金流出を抑えたいところです。その一方で法人税法で役員報酬の変更を否認されないよう注意を払わねばなりません。

そこで今回は法人税法で認められている改定事由の一つ業績悪化改定事由について関係法令通達等を一つ一つ確認しながら解説していきます。

定期同額給与

法人税法では役員給与の損金算入(法人税の計算で経費にすること)を無条件に認めているわけではありません。ですので役員報酬の変更も含め要件に合致するか確認をする必要があります。

役員報酬の基礎知識については以下の記事で解説していますのであわせてご覧ください。

青ざめる人
役員報酬は定期同額給与で!否認されない為の基礎知識

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法人税法で損金算入できる役員給与は定期同額給与、事前確定届出給与、業績連動給与の3つに限定されています。

このうち中小企業が通常使う定期同額給与の要件は以下のとおりです。

定期同額給与の要件

  1. 毎月同額支給
  2. 変更が認められるのは次の3つだけ
    ・期首から3か月以内の通常改定
    ・臨時改定事由による改定
    ・業績悪化改定事由による減額改定

変更にも制約があり上記3つに限定されています。

期首から3か月以内であれば自由に変更できますが、3か月を超えての変更は臨時改定事由か業績悪化改定事由に該当しなければ、通常改定以後の役員報酬について改定前と改定後との差額が損金不算入(法人税の計算で経費にできない)になります。

今回は法人税法上認められている3つの改定のうち業績悪化改定事由に絞って見ていきます。

どのような場合に業績悪化改定事由に該当するのか関係法令通達等を一つ一つ確認していきましょう。

業績悪化改定事由の関係法令通達等の全体像

まずは全体像から。今現在出ている業績悪化改定事由の取扱いに関する法令通達等は以下のとおりです。

業績悪化改定事由の関係法令通達等

  • 法人税法施行令第69条第1項第1号ハ《定期同額給与の範囲等》・・・業績悪化改定事由について規定
  • 法人税基本通達9-2-13《経営の状況の著しい悪化に類する理由》・・・上記法令第69条の法令解釈通達・・・業績悪化改定事由の判断基準について規定
  • 役員給与に関するQ&A(平成24年4月改訂) ・・・業績悪化改定事由の事例2つ
  • 国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ(令和2年4月追加)・・・コロナに関連した業績悪化改定事由の事例2つ

上から順に見ていきます。

業績悪化改定事由とは(法人税法施行令第69条)

業績悪化改定事由は法人税法施行令第69条第1項第1号ハ《定期同額給与の範囲等》で次のように規定されています。

経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由

まずは「経営の状況が著しく悪化した」場合が業績悪化改定事由に該当します。

そして「その他これに類する理由」に関して以下の法令解釈通達が出ています。

業績悪化改定事由の判断基準(法人税基本通達9-2-13)

上記の「その他これに類する理由」に関して法人税基本通達9-2-13《経営の状況の著しい悪化に類する理由》で以下のような判断基準が示されています。

(経営の状況の著しい悪化に類する理由

9-2-13 令第69条第1項第1号ハ《定期同額給与の範囲等》に規定する「経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由」とは、経営状況が著しく悪化したことなどやむを得ず役員給与を減額せざるを得ない事情があることをいうのであるから、法人の一時的な資金繰りの都合や単に業績目標値に達しなかったことなどはこれに含まれないことに留意する。(平19年課法2-3「二十二」により追加、平19年課法2-17「二十」により改正)

引用:法令解釈通達/第3款 定期同額給与(国税庁ホームページ)

そしてこの通達に関して以下の趣旨説明がされています。

【解説】

どのような事情が生じたときが「その他これに類する理由」に当たるかについては、事柄の性質上、個々の実態に即して判断するほかなく、いずれにしても事前に定められていた役員給与の額を減額せざるを得ないやむを得ない事情が存するかどうかにより判定することとなると解される。ただし、「経営状況が著しく悪化」との規定振りから明らかなように、少なくとも、法人の一時的な資金繰りの都合や単に業績目標値に達しなかったことなどの理由は、これに含まれないこととなる。
また、例えば、経営の状況の悪化により従業員の賞与を一律カットせざるを得ないような状況にある場合は、通常は、本通達にいう「経営状況が著しく悪化したことなどやむを得ず役員給与を減額せざるを得ない事情」がある場合に当たるといえよう。
本通達はこのことを明らかにしている。

引用:平成19年3月13日付課法2-3ほか1課共同「法人税基本通達等の一部改正について」(法令解釈通達)の趣旨説明(国税庁ホームページ)

法令ではなく通達ですので個々の状況によっては別の法令解釈があるかもしれませんが、最低限、調査官はこの判断基準で税務調査に臨んでくるわけなので、こちらもこの判断基準を押さえて対応する必要があります。

業績悪化改定事由の判断基準

経営状況の悪化に伴い

  • 「役員給与を減額せざるを得ない」事情がある・・・業績悪化改定事由に該当
  • 「役員給与を減額せざるを得ない」事情がない・・・業績悪化改定事由に該当しない

この判断基準は、役員報酬を使った恣意的な利益操作を排除するという定期同額給与の立法趣旨からも合理的な判断基準ではないでしょうか。

上記通達とその趣旨説明、下記Q&A、FAQの事例も全てこの判断基準で判定されています。

  • 法人の一時的な資金繰りの都合・・・一時的な資金不足であればお金があるときに払えばいいので「役員給与を減額せざるを得ない」事情には該当しません。
  • 単に業績目標値に達しなかった・・・業績目標値はそれほど低く設定しませんので、それに達しなかったからといって「役員給与を減額せざるを得ない」事情には該当しません。
  • 経営の状況の悪化により従業員の賞与を一律カットせざるを得ないような状況にある場合・・・従業員の賞与をカットして、自分の役員給与はそのままというのはありえませんので「役員給与を減額せざるを得ない」事情に該当します。

役員給与に関するQ&A(平成24年4月改訂)

役員給与に関するQ&A(平成24年4月改訂)では「役員給与を減額せざるを得ない」事例を2パターン載せています。

2パターン

  • 悪化の程度が著しくない場合・・・[Q1]
  • 現状悪化してない業績悪化見込の場合・・・[Q1-2]

[Q1](業績等の悪化により役員給与の額を減額する場合の取扱い)

[Q1]は悪化の程度が「経営状況が著しく悪化した」とまではいかないが経営状況の悪化に伴い第三者である利害関係者との関係上「役員給与を減額せざるを得ない」という事例になっています。

[質問]と[回答]は省略して[解説]の抜粋から見ていきます。

[解説]⑶

業績悪化改定事由については、「経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由」と規定されていることから、経営状況が相当程度悪化しているような場合でなければこれに該当せず、対象となる事例は限定されているのではないかといった疑問もあるところです。
これについては、法人税基本通達9-2-13 のとおり、「経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由」とは、経営状況が著しく悪化したことなどやむを得ず役員給与を減額せざるを得ない事情があることをいいますので、財務諸表の数値が相当程度悪化したことや倒産の危機に瀕したことだけではなく経営状況の悪化に伴い、第三者である利害関係者(株主、債権者、取引先等)との関係上、役員給与の額を減額せざるを得ない事情が生じていれば、これも含まれることになります。

引用:役員給与に関するQ&A(平成24年4月改訂)[Q1](国税庁ホームページ)

悪化が著しくない場合のポイント

  • 経営状況の悪化に伴い
  • 第三者である利害関係者(株主、債権者、取引先等)との関係上、「役員給与を減額せざるを得ない」

具体例として3事例掲げています。

[解説]⑶

例えば、次のような場合の減額改定は、通常、業績悪化改定事由による改定に該当することになると考えられます。
株主との関係上、業績や財務状況の悪化についての役員としての経営上の責任から役員給与の額を減額せざるを得ない場合
取引銀行との間で行われる借入金返済のリスケジュールの協議において、役員給与の額を減額せざるを得ない場合
③ 業績や財務状況又は資金繰りが悪化したため、取引先等の利害関係者からの信用を維持・確保する必要性から、経営状況の改善を図るための計画が策定され、これに役員給与の額の減額が盛り込まれた場合

引用:役員給与に関するQ&A(平成24年4月改訂)[Q1](国税庁ホームページ)

①は株主が不特定多数の者からなる法人が前提になります。役員=株主の同族会社は業績悪化で経営責任を問われ「役員給与を減額せざるを得ない」ということにはならないので基本的に除かれます。

②③は銀行や仕入先などに返済や支払を待ってもらったり、免除してもらって、自分の役員給与はそのままというのはありえませんので「役員給与を減額せざるを得ない」事情に該当します。

最後に留意点を掲げています。

[解説]⑷

上記⑶に掲げた3事例以外の場合であっても、経営状況の悪化に伴い、第三者である利害関係者との関係上、役員給与の額を減額せざるを得ない事情があるときには、減額改定をしたことにより支給する役員給与は定期同額給与に該当すると考えられます。この場合にも、役員給与の額を減額せざるを得ない客観的な事情を具体的に説明できるようにしておく必要があります
なお、業績や財務状況、資金繰りの悪化といった事実が生じていたとしても、利益調整のみを目的として減額改定を行う場合には、やむを得ず役員給与の額を減額したとはいえないことから、業績悪化改定事由に該当しないことは言うまでもありません。

引用:役員給与に関するQ&A(平成24年4月改訂)[Q1](国税庁ホームページ)

業績悪化改定事由の判断基準「役員給与を減額せざるを得ない」事情が「客観的であること」と、それを「具体的に説明できるようにしておくこと」を求めています。

税務調査に備えて説明資料は作っておきましょう。
①経営責任から役員給与を減額した旨記載がある株主総会議事録
②取引銀行とのリスケジュールの協議状況等の資料
③取引先等の利害関係者の信用維持確保の為に策定開示等した経営改善計画書

株主総会議事録は以下の事例も含め全ての場合で必須です。

[Q1-2](業績の著しい悪化が不可避と認められる場合の役員給与の減額) 〔平成 24 年 4 月追加〕

[Q1-2]は現状ではまだ「経営状況が著しく悪化した」とまではいかないが客観的な状況から今後著しく悪化することが不可避であるため「役員給与を減額せざるを得ない」という事例になっています。

[質問]の全文から見ていきます。

[Q1-2]

当社(年1回3月決算)は、ここ数年の不況の中でも何とか経営を維持してきましたが、当期において、売上の大半を占める主要な得意先が1回目の手形の不渡りを出したため、その事情を調べたところ、得意先の経営は悪化していてその事業規模を縮小せざるを得ない状況にあることが判明し、数か月後には当社の売上が激減することが避けられない状況となりました。そこで、役員給与の減額を含む経営改善計画を策定し、 今月から役員給与を減額する旨を取締役会で決議しました。
ところで、年度中途で役員給与を減額した場合にその損金算入が認められるためには、 その改定が「経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由」(業績悪化改定事由)によることが必要とのことですが、当社のように、現状ではまだ売上が減少しておらず、数値的指標が悪化しているとまでは言えない場合には、業績悪化改定事由による改定に該当しないのでしょうか

引用:役員給与に関するQ&A(平成24年4月改訂)[Q1-2](国税庁ホームページ)

上記[質問]に対する[解説]を抜粋して見ていきます

[解説]

業績悪化改定事由とは、「経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由」をいいます。
この業績悪化改定事由は、経営状況が著しく悪化したことなどやむを得ず役員給与を減額せざるを得ない事情があることをいい、通常は売上や経常利益などの会社経営上の数値的指標が既に悪化している場合が多いものと思われますが、ご質問の場合のように、現状ではこれらの指標が悪化しているとまでは言えない場合にも業績悪化改定事由に当たるのかどうか疑問が生じます。

⑵ この点、ご質問は、売上の大半を占める主要な得意先が1回目の手形の不渡りを出したという客観的な状況があり、得意先の経営状況を踏まえれば数か月後には売上が激減することが避けられない状況となったため、役員給与の減額を含む経営改善計画を策定したとのことです。
このように、現状では数値的指標が悪化しているとまでは言えないものの役員給与の減額などの経営改善策を講じなければ、客観的な状況から今後著しく悪化することが不可避と認められる場合には、業績悪化改定事由に該当するものと考えられます。また、今後著しく悪化することが不可避と認められる場合であって、これらの経営改善策を講じたことにより、結果として著しく悪化することを予防的に回避できたときも、業績悪化改定事由に該当するものと考えられます。

引用:役員給与に関するQ&A(平成24年4月改訂)[Q1-2](国税庁ホームページ)

「役員給与を減額せざるを得ない」場合として既に「業績が悪化した」場合だけでなく現状では悪化しているとまでは言えなくても今後「業績の悪化が見込まれる」場合も含まれることが示されています。

ただし「客観的な状況から今後経営状況が著しく悪化することが不可避と認められる場合には」としています。

業績悪化見込の場合のポイント

  • 客観的な状況から
  • 今後経営状況が著しく悪化することが不可避
  • (客観的な状況)売上の大半を占める主要な得意先が不渡り
  • (今後経営状況が著しく悪化することが不可避)数か月後には売上が激減することが避けられない

同様の具体例として1事例掲げています。

[解説]

ご質問の場合以外にも、例えば、主力製品に瑕疵があることが判明して、今後、多額の損害賠償金やリコール費用の支出が避けられない場合なども業績悪化改定事由に該当するものと考えられますが、あくまでも客観的な状況によって判断することになりますから、客観的な状況がない単なる将来の見込みにより役員給与を減額した場合は業績悪化改定事由による減額改定に当たらないことになります。

引用:役員給与に関するQ&A(平成24年4月改訂)[Q1-2](国税庁ホームページ)

  • (客観的な状況)主力製品に瑕疵があることが判明
  • (今後経営状況が著しく悪化することが不可避)今後、多額の損害賠償金やリコール費用の支出が避けられない

最後に留意点を掲げています。

[解説]⑶

なお、ご質問のような場合には、役員給与を減額するに当たり、会社経営上の数値的指標の著しい悪化が不可避と判断される客観的な状況としてどのような事情があったのか、経営改善策を講じなかった場合のこれらの指標を改善するために具体的にどのような計画を策定したのか、といったことを説明できるようにしておく必要がありますので、留意してください。

引用:役員給与に関するQ&A(平成24年4月改訂)[Q1-2](国税庁ホームページ)

[Q1]同様、業績悪化改定事由の判断基準「役員給与を減額せざるを得ない」事情が「客観的であること」と、それを「具体的に説明できるようにしておくこと」を求めています。

税務調査に備えて説明資料は作っておきましょう。

国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ(令和2年4月追加)

当面の税務上の取扱いに関するFAQ(令和2年4月追加)ではコロナに関連した「役員給与を減額せざるを得ない」事例を2パターン載せています。

2パターン

  • 業績が悪化した場合・・・問 6
  • 現状悪化してない業績悪化見込の場合・・・問 7

基本的な考え方は全て上述した法人税基本通達9-2-13、役員給与に関するQ&A(平成24年4月改訂)が基になっています。

問 6.《業績が悪化した場合に行う役員給与の減額》 〔4月 13 日追加〕

[質問]の全文。

問 6.《業績が悪化した場合に行う役員給与の減額》 〔4月 13 日追加〕
当社は、各種イベントの開催を請け負う事業を行っていますが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止の観点から、イベント等の開催中止の要請があったことで、今後、数か月間先まで開催を予定していた全てのイベントがキャンセルとなりました。
その結果、予定していた収入が無くなり、毎月の家賃や従業員の給与等の支払いも困難な状況であることから、当社では、役員給与の減額を行うこととしました。
法人税の取扱いでは、年度の中途で役員給与を減額した場合、定期同額給与に該当せず、損金算入が認められないケースもあると聞いています。
そこで、当社のような事情によって役員給与を減額した場合、その役員給与は定期同額給与に該当するでしょうか。

引用:国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ(令和2年4月追加)(国税庁ホームページ)

[回答解説]の全文。

〇 貴社が行う役員給与の減額改定については、業績悪化改定事由による改定に該当するものと考えられます。
したがって、改定前に定額で支給していた役員給与と改定後に定額で支給する役員給与は、それぞれ定期同額給与に該当し、損金算入することになります。
〇 法人税の取扱いにおける「業績悪化改定事由」とは、経営状況が著しく悪化したことなどやむを得ず役員給与を減額せざるを得ない事情があることをいいますので、貴社のように、業績等が急激に悪化して家賃や給与等の支払いが困難となり、取引銀行や株主との関係からもやむを得ず役員給与を減額しなければならない状況にある場合は、この業績悪化改定事由に該当することになります。
〔参考〕
➣ 法人税基本通達9-2-13(経営の状況の著しい悪化に類する理由)
➣ 役員給与に関するQ&A(平成 24 年4月改訂版)[Q1](業績等の悪化により役員給与の額を減額する場合の取扱い)

引用:国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ(令和2年4月追加)(国税庁ホームページ)

そもそもコロナの影響によるイベント中止で数か月間先まで売上がゼロになっているので、法人税法施行令第69条第1項第1号ハ「経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由」の「経営の状況が著しく悪化したこと」に該当しますが、上述した役員給与に関するQ&A[Q1]同様、経営状況の悪化に伴い、第三者である利害関係者(株主、債権者、取引先等)との関係上、「役員給与を減額せざるを得ない」事情にも該当します。

家主や従業員に家賃や給料を支払わないで、自分の役員給与はそのままというのはありえませんので「役員給与を減額せざるを得ない」事情に該当します。

問 7.《業績の悪化が見込まれるために行う役員給与の減額》 〔4月 13 日追加〕

[質問]の全文。

問 7.《業績の悪化が見込まれるために行う役員給与の減額》 〔4月 13 日追加〕
当社は、新型コロナウイルス感染症の影響により、外国からの入国制限や外出自粛要請が行われたことで、主要な売上先である観光客等が減少しています。そのため、当面の間は、これまでのような売上げが見込めないことから、営業時間の短縮や従業員の出勤調整といった事業活動を縮小する対策を講じています。
また、いつになれば、観光客等が元通りに回復するのかの見通しも立っておらず、今後、売上げが更に減少する可能性もあるため、更なる経費削減等の経営改善を図る必要が生じています。一方で、当社の従業員の雇用や給与を維持するため、急激なコストカットも困難であることから、当社の経営判断として、まずは役員給与の減額を行うことを検討しています。
しかしながら、法人税の取扱上、年度の中途で役員給与を減額した場合にその損金算入が認められるのは、経営が著しく悪化したことなど、やむを得ず減額せざるを得ない事情(業績悪化改定事由)がある場合に限られると聞いています。
そこで、当社のような理由による役員給与の減額改定は、業績悪化改定事由による改定に該当するのでしょうか。

引用:国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ(令和2年4月追加)(国税庁ホームページ)

[回答解説]の全文

〇 貴社が行う役員給与の減額改定について、現状では、売上などの数値的指標が著しく悪化していないとしても、新型コロナウイルス感染症の影響により、人や物の動きが停滞し、貴社が営業を行う地域では観光需要の著しい減少も見受けられるところです。
〇 また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が防止されない限り、減少した観光客等が回復する見通しも立たないことから、現時点において、貴社の経営環境は著しく悪化しているものと考えられます。
〇 そのため、役員給与の減額等といった経営改善策を講じなければ、客観的な状況から判断して、急激に財務状況が悪化する可能性が高く、今後の経営状況が著しく悪化することが不可避と考えられます。
〇 したがって、貴社のような理由による役員給与の減額改定は、業績悪化改定事由による改定に該当します。
〔参考〕
➣ 法人税基本通達9-2-13(経営の状況の著しい悪化に類する理由)
➣ 役員給与に関するQ&A(平成 24 年4月改訂版)[Q1-2](業績等の著しい悪化が不可避と認められる場合の役員給与の減額)

引用:国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ(令和2年4月追加)(国税庁ホームページ)

  • (客観的な状況)コロナの影響による外国からの入国制限や外出自粛要請で、主要な売上先である観光客等が減少、コロナの感染拡大が防止されない限り、減少した観光客等が回復する見通しも立たない
  • (今後経営状況が著しく悪化することが不可避)今後、売上の更なる減少と従業員の雇用や給与を維持するため、急激なコストカットも困難であることから経営状況が著しく悪化することが避けられない

まとめ

いかがだったでしょうか?業績悪化改定事由について税務調査で否認されぬよう網羅的に解説しました。ご活用ください。

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