コロナ緊急経済対策の一つとして新たな制度、納税猶予の特例が4月30日にスタートしました。2月納期限分から遡って適用されます。無担保、延滞税なしの資金繰り支援策です。
今回はその新納税猶予の特例について、資金繰りの観点から解説します。
目次
納税の猶予の特例(特例猶予)とは
特例猶予とは政府がコロナ緊急経済対策として令和3年1月31日までの期間限定で打ち出した資金繰り支援策です。その為従来の猶予制度に比べかなり優遇されています。
特例猶予の優遇措置
- 納期限から1年間納税猶予(途中での納付、分割納付も可能)
- 延滞税全額免除(通常年8.9%、従来猶予年1.6%)
- 担保提供不要
特例猶予を資金繰りに使うべし!
平時であれば納税が最優先ですが、コロナ禍の今は資金確保が最優先です。その為に政府も緊急経済対策を打ち出しました。
特例猶予が資金繰りに使える点は以下のとおりです。
資金繰りに使える点
- 時間をかけず資金確保できる
- 資金が尽きる前に資金確保できる
時間をかけず資金確保できる
コロナ特別貸付、持続化給付金、雇用調整助成金など使えるものはフル活用ですが、入金までに時間がかかります。その点特例猶予は入金こそありませんが簡単な申請で出金を止めることができ、時間をかけず資金確保できます。急場をしのぐ資金繰り策ですが、融資や給付金などが入金になるまでのつなぎに使えます。
資金が尽きる前に資金確保できる
納税猶予は資金が尽きて税金が払えない状態になってから受けるものというイメージがあるかもしれませんが、特例猶予は政府がコロナ緊急経済対策として打ち出した資金繰り支援策ですので資金が尽きる前に6か月分の運転資金等を確保した状態で申請できます。
特例猶予がどのような場合に受けられるのか、資金に余力があるうちに押さえておきましょう。そしていざという時に備えておきましょう。
特例猶予の対象となる方
以下の1.2.全て満たす方(個人、法人、規模問わず)が対象になります。
対象となる方
- コロナの影響で売上が前年同期比概ね20%以上減少
(令和2年2月以降の任意の1か月以上の期間で比較) - 一時に納税が困難
一時に納税が困難とは
- 納付可能金額<納付すべき国税・・・この場合「一時に納税が困難」に該当
- 納付可能金額=現預金残高-(向こう6か月分の事業資金・生活費+臨時支出)
(マイナスの場合は0)
現預金残高が6か月分の運転資金以下の場合、納付可能金額はゼロになりますので「一時に納税が困難」の要件はクリアすることになります。
運転資金を半年分持っている事業者はそれほど多くありませんのでこの要件はクリアするのではないでしょうか。
運転資金を半年分持っていない事業者は、売上が20%減少すれば特例猶予を受けられます。
特例猶予の要件をクリアするかどうかの判断は自分で計算しなくても国税庁のホームページから「納税の猶予申請書(特例猶予用)(Excelファイル)」をダウンロードして金額を入力すれば判断できるようになっています。
以下のページからダウンロードできます。
リンク:新型コロナウイルス感染症の影響により納税が困難な方へ(国税庁ホームページ)
案ずるより産むが易し。まずはダウンロードして金額を入力してみましょう。
金額の入力は以下の項目だけです。あとは自動計算してくれます。入力ガイドも出ます。
・納付すべき国税(本税)
・売上
・給与、家賃収入など売上以外の収入
・仕入
・販売費/一般管理費
・借入金返済
・生活費(個人の場合だけ入力)
・今後6か月間に予定されている臨時支出等の額
・現金
・預貯金
申請書の「収入減少率」の欄が20%以上で「猶予額」の欄がマイナスではなくプラスの数字になっていれば特例猶予の要件はクリアしていると判断できます。
特例猶予の対象となる国税
対象となる国税
- 令和2年2月1日~令和3年1月31日の期間に納期限が到来する国税
納期限が上記期間に入っているかで判断します。
特例猶予の手続き
以下の期限までに税務署に申請書を提出しなければなりません。自動では受けられません。
申請期限
- 納期限まで
- ただし、特例猶予の施行日令和2年4月30日から2か月間の令和2年6月30日までは、令和2年6月30日まで
6月30日までは遡って適用できる!延滞税の還付も
令和2年6月30日までは上記特例猶予の対象となる国税であれば既に滞納となっている国税でも申請すれば遡って特例猶予を受けられます。
この場合既に払った延滞税は還付されます。
地方税、社会保険料、労働保険料も特例猶予あり!
コロナ緊急経済対策として国税だけでなく、地方税、社会保険料、労働保険料も特例猶予が創設されました。受けられる要件も同じです。申請書も同じような様式になっています。だだし、申請はそれぞれ別です。提出先もそれぞれ異なります。
ですが猶予申請の際、最近(2か月程度)猶予許可が出た他の猶予申請書と猶予許可通知書の写しを提出すれば、記載の省略(猶予額の計算欄)と審査の簡略化が可能になります。時間短縮につなげましょう。
以下がそれぞれの特例猶予情報と申請書を入手する為のページになります。
国税
リンク:新型コロナウイルス感染症の影響により納税が困難な方へ(国税庁ホームページ)
地方税
リンク:新型コロナウイルス感染症の影響に伴う地方税における対応について(総務省ホームページ)※地方税の申請書に関しては各地方公共団体のホームページから入手して下さい。
社会保険料
リンク:新型コロナウイルス感染症の影響による納付の猶予(特例)(日本年金機構のホームページ)
労働保険料
リンク:新型コロナウイルス感染症関連情報(厚生労働省ホームページ)
まとめ
いかがだったでしょうか?現状、存続の為には資金確保が最優先です。資金に余力があるうちにあらゆる策を検討しておきましょう。特例猶予もそのうちの一つかもしれません。