消費税

消費税!居住用賃貸建物の仕入税額控除の制限調整

2020年7月1日

居住用賃貸建物?

前回の調整対象固定資産の仕入税額控除の調整に引続き今回も仕入税額控除の調整について。

今回は令和2年度改正で新たに出来た居住用賃貸建物の仕入税額控除の制限と調整について解説します。

居住用賃貸建物の仕入税額控除の制限と調整

居住用賃貸建物を取得した時にかかる消費税については、建物の家賃収入が住宅の貸付で非課税である為、本来仕入税額控除できません(還付を受けられません)が、金の売買で課税売上を作って還付を受けるという租税回避が行われてきました。

令和2年度消費税改正で

その為令和2年度消費税改正で居住用賃貸建物の

  • 取得時の仕入税額控除(原則課税)
  • 取得後3年間の仕入税額控除の調整(原則課税)

が以下のように改正されました。

改正後

  • (取得時)居住用賃貸建物(注1)→仕入税額控除できない・・・仕入税額控除の制限
  • (取得後)課税賃貸用(注2)に転用、譲渡→仕入税額控除に加算(家賃収入・譲渡収入による課税売上割合で)・・・居住用賃貸建物の仕入税額控除の調整/転用譲渡

(注1)居住用賃貸建物・・・住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物以外の建物であって高額特定資産(※1)又は調整対象自己建設高額資産に該当するもの

(※1)高額特定資産・・・税抜1,000万円以上の棚卸資産又は調整対象固定資産(※2)

(※2)調整対象固定資産・・・税抜100万円以上の固定資産

(注2)課税賃貸用・・・非課税とされる住宅の貸付け以外の貸付けの用

令和2年度消費税改正までは(参考)

令和2年度消費税改正までは居住用賃貸建物の

  • 取得時の仕入税額控除(原則課税)
  • 取得後3年間の仕入税額控除の調整(原則課税)

は以下の2パターンでした。

改正前パターン1

  • (取得時)個別対応方式の非課税業務用→仕入税額控除できない
  • (取得後)課税業務用に転用→仕入税額控除に加算(転用時期に応じ1/3ずつ)・・・調整対象固定資産の仕入税額控除の調整/転用

改正前パターン2

  • (取得時)比例配分法→仕入税額控除できる(課税売上割合で)
  • (取得後)課税売上割合が著しく減少→仕入税額控除を減算(通算課税売上割合に)・・・調整対象固定資産の仕入税額控除の調整/課税売上割合が著しく変動

居住用賃貸建物の改正の経緯については以下の記事をご覧ください。

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調整対象固定資産の仕入税額控除の調整については以下の記事をご覧ください。

注意事項
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居住用賃貸建物の仕入税額控除の調整/転用した場合

要件

転用した場合の要件

  1. 居住用賃貸建物を取得
  2. 居住用賃貸建物を取得した場合の仕入税額控除の制限の適用を受けた
  3. 居住用賃貸建物の全部又は一部を調整期間(注1)に課税賃貸用(注3)に転用
  4. 第3年度の課税期間(注2)の末日に居住用賃貸建物を有している(有していない場合は調整計算なし)
  5. 第3年度の課税期間(注2)が原則課税(免税事業者、簡易課税の場合は調整計算なし)

(注1)調整期間・・・取得日から第3年度の課税期間(注2)の末日まで

(注2)第3年度の課税期間・・・仕入課税期間の初日から3年を経過する日の属する課税期間

(注3)課税賃貸用・・・非課税とされる住宅の貸付け以外の貸付けの用

調整

上記要件に該当するときは以下の金額を第3年度の課税期間の仕入税額控除に加算します。

第3年度の加算額

居住用賃貸建物の取得に係る消費税×家賃収入による課税売上割合※

※家賃収入による課税売上割合(調整期間の居住用賃貸建物の家賃収入)
分子:課税賃貸用家賃収入(課税売上)
分母:居住用家賃収入(非課税売上)+課税賃貸用家賃収入(課税売上)

具体例 居住用(アパマン)から事業用(テナント)に転用した場合

建物取得に係る消費税100
1年目、居住用家賃30、事業用家賃 0
2年目、居住用家賃30、事業用家賃 0
3年目、居住用家賃10、事業用家賃30→途中から事業用に転用
合 計、非課税売上70、課税売上 30

  • 取得年の仕入税額控除0→居住用賃貸建物の仕入税額控除の制限
  • 3年目の仕入税額控除100×30/(70+30)=30加算→最終的な仕入税額控除30(家賃収入による課税売上割合)

居住用賃貸建物の仕入税額控除の調整/譲渡した場合

要件

譲渡した場合の要件

  1. 居住用賃貸建物を取得
  2. 居住用賃貸建物を取得した場合の仕入税額控除の制限の適用を受けた
  3. 居住用賃貸建物の全部又は一部を調整期間(注1)に譲渡
  4. 譲渡した課税期間が原則課税(免税事業者、簡易課税の場合は調整計算なし)

(注1)調整期間・・・取得日から第3年度の課税期間(注2)の末日まで

(注2)第3年度の課税期間・・・仕入課税期間の初日から3年を経過する日の属する課税期間

調整

上記要件に該当するときは以下の金額を譲渡した課税期間の仕入税額控除に加算します。

譲渡年の加算額

居住用賃貸建物の取得に係る消費税×家賃収入・譲渡収入による課税売上割合※

※家賃収入・譲渡収入による課税売上割合(取得日から譲渡日までの居住用賃貸建物の家賃収入・譲渡収入)
分子:課税賃貸用家賃収入(課税売上)+譲渡収入(課税売上)
分母:居住用家賃収入(非課税売上)+課税賃貸用家賃収入(課税売上)+譲渡収入(課税売上)

具体例 居住用(アパマン)を譲渡した場合

建物取得に係る消費税100
1年目、居住用家賃40、事業用家賃 0
2年目、居住用家賃40、事業用家賃 0
3年目、居住用家賃 0、事業用家賃 0、譲渡収入720→期首に譲渡
合 計、非課税売上80、課税売上  0、課税売上720

  • 取得年の仕入税額控除0→居住用賃貸建物の仕入税額控除の制限
  • 譲渡年の仕入税額控除100×(0+720)/(80+0+720)=90加算→最終的な仕入税額控除90(家賃収入・譲渡収入による課税売上割合)

まとめ

いかがだったでしょうか?自販機スキームに始まって金地金スキームと続いてきた賃貸住宅の消費税還付をめぐる租税回避。令和2年度改正でようやくピリオドが打たれました。

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