会計

減価償却とは?会計初心者のための基本3ポイント【後半】特徴とキャッシュフロー計算

2020年2月7日

電卓

前回【前半】は減価償却の意味、目的。それとその目的となっている損益計算についても少しつっこんで解説しました。

今回【後半】は減価償却費の特徴とキャッシュフローの簡単な計算のしかた「償却前利益」について解説します。

減価償却費の特徴は支出を伴わない費用

減価償却費の特徴は「支出を伴わない費用」ということです。それが他の費用と異なるところになります。固定資産の取得の時にはお金の支払いがありますが、減価償却費自体は資産から費用に振替えているだけの費用なのでお金の支払いがありません。

減価償却費の「支出を伴わない費用」という特徴から次に説明する損益計算と並んで重要なキャッシュフロー計算(お金の収支計算)では利益に減価償却費を足し戻します。

減価償却費は利益にプラスアルファのお金を生み出すということで「減価償却の自己金融効果」と言われています。

キャッシュフローの簡単な計算のしかた償却前利益

償却前利益(しょうきゃくまえりえき)とは

償却前利益(簡易キャッシュフロー)=利益+減価償却費

償却前利益は、その企業が年間に生み出すキャッシュの量(お金の量)で、その企業の年間の借入金の返済能力になります(概算)。

銀行も使う重要な概念です。まずは「しょうきゃくまえりえき」という言葉を覚えましょう。

損益計算と並んでキャッシュフロー計算も重要です。

前回【前半】まで損益計算をするために減価償却をするということを見てきましたが、今回は目的が違うキャッシュフロー計算なので逆に利益に減価償却費を足し戻します。

損益計算は企業の業績を把握するための重要な計算です。税務申告をするうえでも損益計算は欠かせません。いっぽうでキャッシュフロー計算もそれと並んで重要な計算になります。「勘定合って銭足らず」や「黒字倒産」と言われるように、利益があってもお金が回らなければ企業は存続できません。

前回【前半】の具体例で償却前利益を計算してみると

年の初めに営業用軽自動車を100で取得。法定耐用年数(使える年数)4年で、1年間の減価償却費(車の使用コスト)は25。軽自動車を使って毎年40売上を上げるとします。

損益計算書1年目2年目3年目4年目4年合計
売上①(結果)40404040160
減価償却費②(原因)25252525100
利益①-②1515151560
キャッシュフロー計算書
利益①1515151560
減価償却費②25252525100
償却前利益③(①+②)(簡易)40404040160
車の取得④(投資)100100
借金返済⑤(財務)
キャッシュ増減③-④-⑤△6040404060

利益15に減価償却費25を足した償却前利益40がお金の入金である売上40と一致していることを確認できると思います。この償却前利益40がその企業が年間に生み出すキャッシュの量(営業キャッシュフロー)で、そこから固定資産を買ったり(投資キャッシュフロー)、借金を返したり(財務キャッシュフロー)することになります。償却前利益40から車の取得100を引いたキャッシュ増減は、前回【前半】の具体例減価償却をしない場合の収支計算と一致します。

償却前利益の活用のしかた

償却前利益を使って利益だけでは判断できないその企業の借入金の返済能力を判断します。利益が赤字でも償却前利益(簡易キャッシュフロー)は黒字で月々の借入金返済に支障がない場合や利益が黒字でも償却前利益(簡易キャッシュフロー)が月々の借入金返済額に届かず勘定合って銭足らずであったりなど、利益と借入金の返済能力は必ずしも一致しません。

償却前利益(簡易キャッシュフロー)が借入金返済額(元金部分)を上回っていればひとまず資金繰りは大丈夫だと判断できます。逆に借入金返済額(元金部分)を下回っていればいずれ資金繰りに行き詰まるので利益を上げるか融資を受けるか何らかの対策が必要だと判断できます。

また償却前利益(簡易キャッシュフロー)の10倍(10年で返済できる)が借入限度額の目安とされています。

償却前利益は正確なキャッシュフロー計算(売掛、在庫などの加味が必要)ではありませんが、とりあえず大まかなキャッシュフローの判断に使えます。

まとめ

いかがだったでしょうか?今回【後半】は減価償却費の特徴が「支出を伴わない費用」で、その特徴から損益計算と並んで重要なキャッシュフロー計算では利益に減価償却費を足し戻すということ。それとそのキャッシュフローの簡単な計算のしかた「償却前利益」について解説しました。

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