会計

減価償却とは?会計初心者のための基本3ポイント【前半】意味、目的と損益計算

2020年2月7日

電卓

みなさん、減価償却についてどのくらい理解していますか?

税務申告で決算書を作るとき、銀行融資で事業計画書を作るとき、会計事務所から試算表をもらって数字を見るとき、といろいろな場面で登場する減価償却ですが、今回は減価償却の意味、目的、特徴の基本3ポイントについて【前半】と【後半】の2回に分けて細かい計算のしかたではなく、基本的な考え方を理解していただくことを目的に解説していきます。

減価償却とは?固定資産の費用の計上のしかた

店舗用建物や営業用自動車を買ったとき、お金を払っているのだから払った金額が費用になると思いませんか?

実は会計では、買った年に取得価額全額をいっきに費用にすることはできません。店舗用建物は木造なら22年、営業用自動車は軽自動車なら4年、普通自動車なら6年、と資産ごとに決められた耐用年数で毎期決算で減価償却をして分割して費用にしていきます。

減価償却とは

固定資産の費用の計上のしかたのことです。

固定資産の取得価額を耐用年数にわたって分割して費用に計上することを減価償却といいます。

ことばの意味減価(減った価値=使った分を)償却(資産を減らして費用にする)

減価償却費とは

その減価償却によって分割して計上した固定資産の費用のことです。

減価償却費は、その期の固定資産の使用コストを意味します。

減価償却の対象は高額で長期間使われることが特徴の固定資産です。

減価償却の対象となる固定資産とは、店舗用の建物や営業用の自動車など、①高額(10万円以上)で②長期間(使用可能期間1年以上)③事業のために使われる資産(商品など販売用ではなく事業で使う資産)です。固定資産は、土地など減価しない資産を除き、決算で減価償却をして費用にします。

固定資産の取得価額を耐用年数にわたって分割して費用に計上します。

固定資産を取得した時は、取得価額をいっきに費用にするのではなく、いったん財産として資産に計上し、耐用年数にわたって毎期、毎期、決算で減価償却をして減価償却費(計算方法は下の定額法、定率法)を資産から費用に振替えて費用にしていきます。

費用の計算方法には定額法と定率法があります。

減価償却費(費用の側面からみると「使った分=固定資産の使用コスト」、資産の側面からみると「減価分=財産価値減少額」で表裏一体)の計算方法には、定額法と定率法があります。

定額法は、耐用年数にわたって減価償却費(固定資産の使用コスト)を同額計上する方法

定率法は、耐用年数の前半減価償却費(固定資産の使用コスト)を多く計上し、後半少なく計上する方法

減価償却の目的は毎期の損益計算を正しく行う為

それではなんで減価償却で費用を分割計上するのでしょうか。

減価償却の重要な考え方耐用年数22年の店舗用建物ならその店舗を使って22年間売上を上げることになります。ですので店舗の取得価額は22年間の売上を上げるための22年分の費用ということになります。ですので減価償却で取得価額を22年間に費用配分(分割計上)します。

減価償却で費用配分することによって22年間の各年において、店舗の使用コストとその店舗の使用によって得た売上との対応計算ができ、毎期の損益計算を正しく行うことが出来るようになります。

そもそも損益計算とはなんでしょうか。減価償却をしないと。

そもそも損益計算とは、どのようにして(費用)、売上を上げたのか、原因と結果の対応計算です(費用と売上は因果関係)。原因である費用(かけた費用(コスト))とその結果である売上(それによって得た売上)の対比で儲かったのか、儲からなかったのか、費用対効果を測るのが目的です。ですのでお金の入金と出金の管理(資金繰り)が目的の収支計算(キャッシュフロー計算)とは異なります。

減価償却をしないと原因と結果の対応計算ができず、費用対効果を測るための損益計算ではなく、目的の異なる収支計算になってしまいます。

減価償却をした場合、しなかった場合で見ていきましょう。

年の初めに営業用軽自動車を100で取得。法定耐用年数(使える年数)4年で、1年間の減価償却費(車の使用コスト)は25。軽自動車を使って毎年40売上を上げるとします。

まず、減価償却をした場合
損益計算書1年目2年目3年目4年目4年合計
売上①(結果)40404040160
費用②(原因)25252525100
利益①-②1515151560

減価償却で、車の使用コスト25を使った期間4年に費用配分することによって、4年間の各年において、原因である費用(車の使用コスト25)とその結果である売上(それによって得た売上40)の原因と結果の対応計算ができるので、費用対効果を測るための損益計算を正しく行うことが出来ます。

次に、減価償却をしないで取得価額100を全額取得年の費用とした場合
損益計算書1年目2年目3年目4年目4年合計
売上①(結果)40404040160
費用②(原因)100000100
利益①-②△6040404060

毎期、毎期、同じように軽自動車を使って売上を上げているのに1年目は赤字で2年目以降は費用がまったくかからないで売上だけ上がる事業のように計算されています。

1年目は費用100で車を4年使える内の4分の1しか使っていないのに4年分の使用コストが計上され、2年目以降は費用0で車を使っているのに車の使用コストが計上されていません。原因である費用(車の使用コスト)とその結果である売上(それによって得た売上)の原因と結果の対応計算ができていないので費用対効果を測るための損益計算が出来ません。目的の異なる収支計算(キャッシュフロー計算)になってます。

キャッシュフロー計算も次回【後半】で説明する通り事業にとって重要な計算ですが、まずは、会計の主目的である損益計算をしないことには税金の対象でもある利益を計算できません。

まとめ

いかがだったでしょうか?今回【前半】は減価償却の意味、目的。それとその目的となっている損益計算についても少しつっこんで解説してみました。

次回【後半】は減価償却費の特徴「支出を伴わない費用」とキャッシュフローの簡単な計算のしかた「償却前利益」についてを解説します。

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