法人税

法人税の世界の怖い話。みなし役員の役員報酬否認

2020年4月17日

怖がる人

みなさん、法人税のみなし役員をご存知ですか?法人税の世界の怖い話。役員じゃないのに役員とみなされてボーナス否認。

今回はそのような惨事が起こらぬようみなし役員について解説します。

みなし役員とは

前回解説しましたが、法人税法では役員報酬の損金算入について、利益操作を防止する為、定期同額給与などの条件を付けて規制しています。

青ざめる人
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法人税法では更にその対象者である役員の範囲についても、同じく利益操作を防止する為、形式的な会社法上(登記簿上)の役員(取締役、監査役など)だけでなく実質的な経営者も役員とみなして規制しています。

この法人税法上の役員をみなし役員といいます。

みなし役員に対する給与は役員報酬と同様の取扱いとなり届出のないボーナスなどは否認されますので注意が必要です。

寝耳に水。とならぬようみなし役員について確認していきましょう。次の2種類あります。

会長など使用人以外の場合

使用人以外のみなし役員の要件

  • 会長、相談役、顧問など使用人以外で
  • 経営に従事

典型例 会長になった父

取締役を退任しても会長として経営に従事しているとみなし役員になります。

同族会社の使用人の場合

使用人のみなし役員の要件

  • 下記持株要件を全て満たす使用人で
  • 経営に従事

持株要件

  1. その使用人が上位3株主グループ(株主とその親族など)の持株割合を上から順に合計して初めて50%超となる株主グループに属している
  2. その使用人の属する株主グループの持株割合が10%超
  3. その使用人と配偶者の合計持株割合が5%超

典型例 社長(代表取締役)持株割合90%、社長の妻(総務部長)持株割合0%、社長の子(営業部長)持株割合10%

社長の妻の持株要件の判定
1. 親族で(社長90%、妻0%、子10%)>50%
2. 親族で(社長90%、妻0%、子10%)>10%
3. 夫婦で(社長90%、妻0%)>5%
∴ 妻は持株要件を全て満たします

株式の過半数を持っている社長の配偶者は自身持株ゼロでも自動的に持株要件1~3を満たすので、経営に従事していればみなし役員になります。

社長の子の持株要件の判定
1. 親族で(社長90%、妻0%、子10%)>50%
2. 親族で(社長90%、妻0%、子10%)>10%
3. 夫婦で(子10%)>5%
∴ 子は持株要件を全て満たします

株式の過半数を持っている社長の親族は自動的に持株要件1と2を満たすので、持株割合5%超で経営に従事していればみなし役員になります。

今まで持株ゼロだった子が事業承継で持株5%超になると使用人からみなし役員に変わるので要注意です。

経営に従事とは

実質的な経営者かどうか判断する為のみなし役員の重要な要件の一つ、「経営に従事」について法人税法上特に明文規定はありませんが、判例で「法人の主要な業務執行の意思決定に参画すること」とされています。

具体的には、取扱商品製品の決定、販売価額の決定、販売先仕入先の決定、従業員の採用解雇、給料賞与額の決定、設備投資の決定、銀行借入の決定などが「経営に従事」に該当すると考えられます。

単に経理をしている程度では「経営に従事」には該当しません。

みなし役員になると、給与は役員報酬扱い

みなし役員に対する給与は役員報酬と同様の取扱いとなり基本的には定期同額給与の要件を満たさないと損金算入(法人税の計算で経費にすること)できません。

定期同額給与の要件

  1. 毎月同額支給
  2. 変更は期首から3か月以内(例外、臨時改定事由、業績悪化改定事由による改定)

上記要件に当てはまらないボーナス、残業代、歩合給、期首から3か月を過ぎた昇給は否認されますので要注意です。
詳しくは前回記事をご覧ください。

まとめ

いかがだったでしょうか?知らないと怖いみなし役員の話でした。

みなさん、みなし役員にはくれぐれもご注意を!

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